MOSCA U

 

MOSCA 7


「じゃあ。ひとつやってみたいんだけどその鳴く音でSIGUIRIYAのリズムを
奏でてもらっていいかな?」
え?鳴きながら踊んの?
「まずCARMEN!最初の1COMPAS鳴いて!」
「Z・Z・Z・・Z・・Z!」
「CARMENが鳴いたあと踊りはじめる!やってみよう!」
CARMEN隊長が鳴き、私たちは1COMPAS踊る・・・
「はい!そこは4と5の部分だけ鳴いて!」
ZーーZ!
ギターもカンテもなく、サパテアードとZーZーだけのSIGUIRIYAができあがった。
怪しいけど・・・なんか・・・かわいいかも・・・
「はい!今日はここまで!また明日!」
帰りにEMIさんとBARで飲んだ。
「それにしてもびっくりよねぇ。
突然1週間前に電話で、レッスン着は全身真っ黒で来てくださいって言うんだもん!」
「へ?は・・・そうだったんですか・・・」YA ENTIENDO・・・
みんな見るはずだ・・・黒いハエのなかに迷い込んだ1匹の白いハエ・・・
明日は黒いハエになるからね・・・

MOSCA 8


3日目。
今日は4時からISRAELくんがやってきた。
「今から何パターンか踊りを振り付けてみるね。まずはこれから・・・」
ISRAELは突然足をバタバタし始めた。
かと思うと両手を交互にあちこちに伸ばしては空をつかみ、
その手を口に持っていく・・・
・・・・!!!!ハエが何かを食ってる・・・
次々にISRAELくんはハエの動きを合計8パターン踊ってみせた。
「さ!今から各自これを練習してみて
自分はどれがよかったかあとで聞かせてもらおう。」
・・・・・???・・・・・
迷ってるヒマはない。
8匹のハエたちはまるで取り付かれたように、
8パターンの動きを休むことなく踊り続けた。
ううう・・・気持ちわるう・・・
パターン3・・・飛び回るハエ。 腕をバタバタさせ跳ねながら回転・・・・・
パターン4・・・ウンコの上でくるくる旋回するハエ。
両手で輪を作り下を向いたままその場でくるくる回る・・・
パターン3・4は回数に限りがない・・・できる回数まで・・・
私はよく子供の頃目が回る遊びをしたのを思い出した。
あの時はしばらく寝転がって天井がくるくる回ってるのを楽しめたが・・・
今回はそのしばらくがない・・・
・・・どうやって止まれっちゅうねん・・・
パン!はい!そこまで!
8匹のハエはもうすでに息絶えていた。
「じゃあ・・・ひとりづつ・・・自分が好きなパターンをやってもらおっかな。」
1匹目・・・食べるハエ
2匹目・・・食べるハエ
3匹目・・・食べる・・・・「ちょ、ちょっと待った!」
「回るハエは嫌い?」
しーん・・・ やっぱり・・・みんないやなのねぇ・・・
「じゃあ指名しよう!」
うそ・・・どきどき・・・どうか・・・
「EMI!CARMEN!3と4ね!」
みんなの視線がいっせいに二人に集まる。
大丈夫・・・・??? しばらくの沈黙の後・・・
EmiさんとCARMENは覚悟を決めたのか一言 「VALE!」
ふうう・・・でも・・・私は何にしよう・・・
「じゃ!SATOKA!なにがいい?やってみて!」私はパターン5をやってみた。
「ん・・・OTRO(別のもの)!」次にパターン6・・・
「no・・・OTRO・・・a! este!(ちがうなぁ・・・あ!それだ!)」
・・・・???・・・バタバタバタバタバタバタバタバターーーパタ!
SATOKAバエの動きが決まった・・・
パターン7。
床であばれてて一瞬止まって考える・・・ハエ?
「さぁ!みんな決まったかな!?続けてやってみよう!」
1匹踊っては小さくその場で足早にテケテケと走り回り、
それを合図に次のハエが踊り出す・・・
「VENGA! MOSCA NUMERO UNO!(さぁ!ハエ1踊って!)」
「ハエ8匹踊りリレー」が始まった!SATOKAバエは5番目・・・MOSCA no4 は・・・
CHLOE(クロエ)か・・・遠くて見えないなぁ・・・
かといって横を向いて見ることはできないし・・・
私は耳を澄ました・・・こうして聞いてみると同じ足でも人それぞれに音色がちがう・・・
CHLOEのサパテアードは決して大きくないが、
粒がきれいにそろっていて心地いい響きを持っていた。
あ・・・このテケテケはCHLOEだ!
私は気配とカンを便りにそのテケテケにつづいてバタバタと暴れだした!
SI!(ピンポーン!)
正解!

MOSCA 9


17:00からのENSAYO・・・
「今日はこの時間の前に8人ソロの振り付けを入れたんでそこまでやってみよう!」
振り付けは第1エスコビージャまで出来上がっている。
その後・・・まず1匹のハエが・・・
タン・タンタンタン!
それに続いて少しづつその足に習って増えていくハエたち・・・
やがてすべてのハエたちがその足を踏みはじめた時・・・パタパタパタパタパタ!
8匹のハエが動き出すのだ!計13回のタン・タンタンタン!
ん・・・5回ぐらいまでは覚えてられるんだけど・・・13回て・・・????
みんなも同じだった。覚えてられないよ・・・
「そうか!じゃ!13回目終わったらCHONI(チョニー)!
ZUUUU!って鳴いて!」BUENA IDEA!(いいかも!)
CHONIバエのおかげでもう誰も迷うことなく(特に8匹のハエたちは!)
パタパタ!と走り回ることができた。
それにしても・・・日々ISRAELに洗脳されている私たち・・・
もう完全に・・・私たちはハエです・・・

MOSCA 10


4日目。
こうして見てみるといろんなハエがいるもんだ・・・
その人その人にある「ハエ」のイメージ・・・
美しいハエ・・・どこか悲しみをおびたハエ・・・
本当に何にも考えてないハエ・・・
さて・・・私のハエは・・・?????
ちょうど今「強化合宿」の為、ISRAELの家の上(ISRAELが2Fで私が3F)に
住んでいる。
そのPISOは、信じられないほどにたくさんのMOSCAが住んでいる。
ISRAELもこのハエたちを見てるのかな・・・
彼達こそMAESTRO!(師匠!)
いつもは「じゃかぁしい!!」っと手で払い除けてるところだが、
今の私は・・・ふんふん・・・へえ・・・
彼達が気持ち悪がるほどに見つめてしまう・・・っていうかむしろ・・・探してしまう・・・(笑)
すばらしい動きだ・・・
彼達が片足を上げてヒコヒコともう片方の足に摺り寄せてる動き・・・
これかぁ!!!
4日目・・・ついにこの動きが振り付けに加わった!
「4・・5!で・・・・」ヒコヒコヒコ!
QUEEEEE!?(はあ!?)QUE MOSCA!!(なんてハエ!?)
ハエたちは賞賛の声をあげた!まさに私たちの求めている動き・・・
ISRAEL・・・ひょっとしてハエ飼ってた???

MOSCA 11


5日目。
今日がENSAYO最終日・・・なんかすっごく早かった気がする。
みんなの顔つきは日々を追うごとにハエらしく・・・(?)いや。険しくなっている。
やっぱりZUUUZUUU言いながら踊るのは並大抵ではない。
「さて!あと残すはFINALのBULERIAだけだね!
さっさと振り付けてあとは何度もORDEN(順番)通りに通して練習だ!」
FINAL・・・BULERIA・・・
やっと振りが終わる・・・ほっ・・・
ISRAELの滝のようにあふれ出てくる振りのスピードといったら!
いつ終わんねん?と思い続けてそのまま4日間が過ぎた。
それが今日、ついに最終章を迎えるのだ!
頭の中は・・・よし!かすかにだけど、まだメモリー残量は残ってる!
さぁ!ISRAELくん!どっからでも来たまえ!
そこで一言。「BULERIAは振り付けないよー!みんな好きに踊って!」
CO・COMO?(へ?)「1つのフレーズを4回歌って
4回目のお尻で突然止まるからその止まるポーズだけはこう!
それまでは好きなBULERIAを踊ってていいよ!」
止まりのポーズ・・・
右手・右足を上げたまま、「シェー!」の格好(古い・・・?)で一瞬止まった後、
指を震わせながら左右に揺れる・・・もちろん鳴きながら・・・ZZZZ・・・
「さぁ!やってみよう!」
ENCARNITA(エンカルニータ)が歌いだした歌は・・・!!!

LA CUCARACHA 〜 LA CUCARACHA 〜
YA NO PUEDE CAMINAR
PORQE NO TIENE PORQE LE FALTA
LAS DOS PATITA DE ATRAS
ゴキブリくん〜 ゴキブリくん
もう通れないのね〜
だってないんだもん 足りないんだもん
後ろの2本足がね〜

これはMEXICO(メキシコ)で流行ったサルサで
よく歌われた歌だそうだ。(替え歌もたくさんあるらしい!)
4拍子だがそれをBULERIAどり(3拍子)で踊る。これまた ゴキブリて・・・
想像してみよう!
総勢27匹ものハエが狂ったようにバタバタ!くるくる!と暴れだす。
歌が止まると同時に同じ格好でピタッと止まり、かすかに揺れるのだ・・・
それも鳴きながら・・・ZZZ!!!
QUE CACCHONDEO!(なんて おもろい・・・!!!)

MOSCA 12


ISARELの想像力は止まらず走り続けた!!!
「そうそう!じゃ!ここでで1つ!左足禁止!!
左足だけは動かさないで今のBULERIA踊って止まってみて!」
想像してみよう!
バタバタ!くるくる!でも左足だけ「ハエとりもち」にくっついたハエたちは・・・
頭までついにおかしくなった!!!???
その動きは前とは比べようもないほど狂っている!!!
舞台・劇場関係者・スタッフは。。。爆笑!!!
そして・・・CARMENが最後に片足で床を大きく踏みつけた!
・・・暗点・・・(ハエ撲滅・・・)
拍手!!!「YA!!! SACABO!!」(終了!!)
終わったぁ!!
私たちは思わず声をあげて喜んだ!
これはひとつの「ハエドラマ」である。なんだろう・・・この感動は・・・
「ただ・・・」
ん?
「ひとつ提案があるんだ・・・」
I.ISRAEL???
「あのさ・・・みんな靴を脱いでくれないかな・・・裸足でやってみて欲しいんだ。」
!!!!!・・・・・・!!!!!
もう!こうなったらなんでもやるよ!みんないっせいに靴を脱いだ。
「27匹のハエドラマ」はこうして完成したのである。

MOSCA 13


当日。3月2日。誕生日の次の日・・・
31歳始めのflamencoは・・・ハエ・・・か。
私はこの記念すべき日を一生忘れられないだろう・・・いや。いろんな意味で。
通い慣れたteatroの裏口。でも今日は「楽屋入り口」・・・
「hola!」
holaaaa!
楽屋で私を待ち受けたみんなはやっぱり真っ黒だった。
17:00最終ENSAYO。リハーサル室で行われた後、舞台でも通された。
で・でけえ・・・
客席を見上げた私は自分が本当のハエのようにちっぽけに感じる。
こんなにたくさんの人が来るんだ・・・ 今は空席なはずの客席・・・なのに・・・なんだろう・・・この重圧感は・・・
その力に、闇に、今にも飲み込まれてしまいそう・・・
この舞台の上でどれだけの人があそこに座る人々に向かっていったんだろう?
仲間と共に・・・あるいは一人で・・・
ありゃ・・・私。かなり緊張してる?・・・両ひざはすでに笑っていた。
「はい!照明つけて!」
わあああ!!!それは27匹すべてへのスポットライトだった!
QUE PRECIOSO!!!(すばらしい!!!)
「みんなその自分の輪のなかでできるだけ踊るんだよ!」
はーい!
なんて素直でかわいいハエたち。
そうだ!1匹1匹はちっぽけでも我らは27匹! 私には仲間がいる!
CARMENと目が合った。いつもの にま!にウインク!
にまぁ!いつのまにか私もうつってしまっていた(笑)
そう!CARMENもいる!よし!いっちょいくか!

MOSCA 14


私たちは2部の最初。1部は大歓声と拍手の中、幕が下りた。
PAUSA(休憩)・・・
さすがにハエたちは動揺を隠せない。体力続く限り楽屋で踊り狂うハエ・・・
自分の鳴き声が気になって鏡に向かってZZZ・・・と鳴き続けるハエ・・・
「ハエらしき美しさ」をと黒のアイシャドーを手放せず、
刻一刻と表情に陰りを(?)刻み込み続けるハエ・・・
ブーッ!第2ベルが鳴る。すべてのハエが動きを止めた。いよいよだ・・・
全てのハエが自分の立ち位置テープの上にとまる。(?)
MUCHA MIERDA!
いつもは「がんばろうぜ!」というこの言葉もハエだけになんだかリアルだ。
「ハエドラマ」はついに火ぶたを切って落とされた!
MIGUEL POVEDAの語りが終わる。
・・・・・MOSCA〜
CARMEN隊長の1コンパス・・・
Z・Z・Zーー・Zーー・Z!
静かな笑いが起こる。ギターもカンテもなく聞こえてくる音は・・・
パタパタという27匹のかすかな足音だけ・・・
???裸足!?会場は一瞬ざわめいた・・・
ISRAEL・・・つかみはOK!だよ!
ていねいにちりばめられたひとつひとつの「ハエの動き」は
重ねていくうちに観客を笑いの渦に・・・
そしてそれはすべて感嘆のため息へとパタンパタンと音を立てるように
裏返っていった。
「ハエ8匹踊りリレー」・・・
ついにこの8匹たちが狂いはじめる!
ドミノのようにつぎつぎと展開されていく「舞い」を目で追っている観客はまさに・・・
あちこちに飛び交うハエたちを追う姿そのものだった!
「ここに1匹!お!あそこにも!・・・おい!今度はここで1匹暴れとる!」
CHLOEバエの合図を察知したSATOKAバエは見事「注目のバトン」を
受け取ったのである!
8匹のハエに触発されたハエたちは
ENCARNITAの「ALEGRIAS」とともに一体化し病に侵されはじめた。
伝染病はさらに進行して・・・LA CUCARACHA 〜 LA CUCARACHA 〜
ついに27匹がバタバタと狂いはじめた!
観客たちはもうすでにハエたちに・・・いや。
ISRAELの術中にはまってしまっている・・・
この勝敗はいかに!!!???人間か?それとも27匹のハエたちか?
LAS DOS PATITA DE・・・!
・・・・・ZZZZZ・・・・・
POVEDAの悲しい歌声・・・ダンッ!
CARMENの大きな足音とともに27匹のハエたちは姿を消した。
これは・・・撲滅・・・???それとも・・・逃亡!!!???
OLEーーー!!!
BRAVOOO!!!
人間たちの押し寄せるような歓声!沸き上がる拍手!!勝った・・・
ハエたちのカーテンコールはさっきの威嚇はどこへ?
というほどの満面の笑顔だった。
それでも挨拶は・・・ 両手スリスリ・・・!!!
やっぱりどこまでもハエである・・・

MOSCA 15


楽屋。
真っ黒のシャドーを落とし、みるみる人間に戻って帰っていく仲間たち・・・
ついに終わってしまったんだ・・・なんかあっという間だったなぁ・・・
うれしい反面ちょっとさみしい・・・ポンッ!
振り返るとそこには、しゃべらずにいたらきっと(?)「いい女」のCARMENが
やっぱり にまぁ!と立っていた。
「HASTA LUEGO! MOSQUITA!」(またね!モスキータ!)
そうだ!また会える!CARMEN・・・あんた!ほんといいやつ・・・いや。MOSCAだよ!
「ZZZ!!!」(またね!)
通じたのかCARMENはウインクして両手をパタパタさせながら
楽屋を背に飛んでいった・・・
さ!私も行くか!BARで編集長が待ってる。
鏡を見ると、私の目の周りには、まだ黒いシャドーが名残惜しそうに残っていた。
・・・にまぁ!
「SATOKA!お願いだからそのシャドー落としてくれ!」(編集長)
ハエドラマ つづく・・・???



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